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写真1.新燃岳周辺の渓流
新燃岳の東側(宮崎県側)には、
高千穂峰からの水を集める高千穂川、
新燃岳と矢岳のコル部に源流のある矢岳川、
大幡山から流れ出す大幡川があります。
これらの渓流は、これまでもたびたび土石流を発生しているので、
いずれも火山地帯の荒廃地重点砂防が行われてきました。
しかし,今回の噴火でさらに莫大な量の火山灰と噴石を排出しました。
南九州はまもなく菜種梅雨となり雨が降り始め、土石流の発生が心配です。
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写真2.新燃岳説明
新燃岳は円形の火口を持つ火山です。標高は1420.8mですが、報道では1421mが使われています。
火口内にある湖の標高は1239mです。
真ん中に小さな湖があり、周囲の火口壁では噴気孔があり水蒸気が上がり、噴泥もありました。
湖の左側にコンターが乱れている部分がありますが、ここは霧島川の源流部で、深さ2,3mのガリー(侵食溝)となっています。
ここには噴気もあり、また噴火口内側には噴気孔がありました。
図の真ん中付近から下側に向かう鎖線は宮崎、鹿児島の県境で、登山道になっているので、
新燃岳の行政区画は大部分が鹿児島県に属しているといえます。
左上方に「市」と見えているのは霧島市(鹿児島県)です。
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写真3.土石流段丘
霧島川最上流部の土石流段丘です。
最上流部なので規模は大きくありません。
2008年8月に発生しました。(2009年撮影)
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写真4.土石流段丘
大幡川上流部に残る土石流段丘です。
表面は樹木に覆われていますが、フラットな面が連続し段丘の痕跡を残しています。
樹木の年輪解析から、35〜40年前に発生したと推定されました。
沢にある岩塊は,大幡川を流下する安山岩です。(2009年撮影)
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写真5.矢岳川の砂防施設
矢岳川上流部の床固め用低ダム群です。
数年間、土石流の発生がなかったため、渓床にはマツやヤナギの稚樹が育っていました。
渓岸には渓床監視用のビデオカメラ、超音波流速計が設置されていましたが、この降灰でどうなっているでしょうか。
(2005年撮影)
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写真6.矢岳川上流部の浸食
矢岳川上流部の沢口に出来た段丘を、次の土石流が浸食したため、段丘の堆積構造が見えるようになりました。
段丘を構成する礫は比較的小さく、マトリックスは砂から細礫です。(2005年撮影)
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写真7.土石流の跡
矢岳川の砂防ダムに残された岩塊で、源流付近では1〜2m程度の岩塊が補足されています。
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写真8.砂防ダム群を俯瞰(ふかん)する
矢岳川の砂防ダム群を矢岳登山中に見下ろしました。
気になるのは林道の橋の部分で、渓床幅がボトルネック状に狭まっていることです。
渓床の狭窄部は土砂を溜めてしまいます。
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写真9.土石流による橋脚の浸食
矢岳川に架かる橋の橋脚部分で、土石流により橋脚のコンクリートが浸食されています。
渓床部分では40cm程度削られ、浸食の影響は、渓床より高さ1.5m程度まで及んでいることが解ります。
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写真10.小規模な土石流
霧島山系中では、小規模な土石流は毎年起こっています。
ここは高千穂川の上流ですが、写真の真ん中左寄りに、水平の地形がみえます。
ここは土石流の堆積土砂で、その後の浸食によって二段の段丘ができています。
堆積している土砂の粒径は、小さく2〜5センチ程度です。
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写真11.小渓流の土石流堆積物
昨年の豪雨で堆積した土砂が浸食され、段丘をつくっている所です。
堆積物の礫径は1〜2cmで、全体的には軽石です。
この周辺には,御池ボラが2m程度堆積しているので、これが崩壊し流下、堆積したものでしょう。
撮影場所は山田川上流部です。
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写真12.山田川上流部の砂防ダム
山田川上流部の砂防ダムと公園。公園はダム上流部の堆砂域を整備したものである。
現在の所、ダムの水通し部には泥流の跡はみられないが、
数ヶ月後、この写真は泥流発生前を記録する重要な資料となるだろう。
(撮影日:3月8日 撮影場所:N31° 51'37.88" E131°59'46.43")
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写真13.堆砂を除去した治山ダム
荒川内川の堆砂を排除したダムを上流側から見たものです。
今のところ火山礫などの火山性の堆積物は見えず、表層堆積物の移動はありません。
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写真14.荒川内川の砂防ダム
宮崎県では先週台風が通過し、三日間で100ミリ前後の降雨がありました。
泥流発生のニュースは出ていませんが、現状を見に行ってきました。
この治山ダムは2月23日にも同じ写角のものをアップしましたが、
ダム下流部に灰色の部分が見えるのは火山礫です。
ダム天端にはなにもなく、ダムの中央付近にある草で覆われた盛り上がりは、
以前に流出した土石流がここで止まり、その上に草がはえたものです。
したがって泥流の発生はなかったものと言えます。
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写真15.地表面の変化
先週、台風に伴う雨がありましたが、その結果、斜面に降り積もっていた火山噴出物の内、
砂以下の細粒部分は流され、比較的大きなものが残されています。
目視では礫です。歩くと砂利の上を歩いているような感じで、ジャリジャリと音がします。
以前は二層構造(表面の粘土粒径物と下位の礫)がありましたが、それがなくなりました。
二層ある時は、この上を歩くと細粒物が舞い上がり、ほこりまみれになりましたが、今はそれもなくなりました。
撮影場所:御池小学校近くの斜面 撮影日:5月31日
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写真16.林内の火山礫
植林地の林内に見られた火山礫の堆積です。
元々あったガリーに周辺から流れ込んだ様相ですが、周辺の状態から見ると堆砂深さは50cm程度でしょう。
量としては多くないです。ついでにこの下流側を覗いてみますと、礫の堆積はありません。
と言うことは、斜面に積もった火山礫の動きは、非常にゆっくりしていて、「ただちには出てこない」ようです。
場所は御池小学校西側の標高570mあたりです。
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写真17.完成した堆砂ダム
荒襲川の上流、R223沿いにできた堆砂用のダムです。
堤高はさほどではありませんが、堆砂域は大きいです。
ただここに流れ込む入り口が橋になっているので狭く、泥流が来た場合、流れ込む前に道路上に拡散する恐れがあります。
いずれ改良されるとは思いますが(場所:都城市荒襲(あらそ))
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写真18.土石流堆積部
荒川内川に見られる土石流堆積物の断面です。
礫は数センチのものから、最大径は5,60センチあります。
最上部に見える黄褐色の層は、御池テフラ(4600年前)です。(場所:戸ノ口橋の横)
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写真19.礫流の出方
植林地内にできたガリーです。
降下した火山礫はスギの枯葉に覆われています。
なんの変哲もない写真ですが、次の写真と較べると、流れ下る礫の速度と形態が解ります。
(撮影日:5月31日)
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写真20.礫流の動き
ガリーの中を半分くらい埋めた軽石。
前回(5月31日)の調査の時には、ありませんでした。
したがってガリーの中の軽石は、14日から16日の大雨によって流されたものでしょう。
厚さは約30cmあります。
(撮影日:6月17日 撮影場所:御池小学校の北西700m、正確にはN31°52'08.63" E130°56'24.25")
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写真21.定点観察
ダム堆砂地の上流側を見たところです。
3月26日の撮影なのでこのころ噴火もそれほどなく、雨も降っていないので地表面には枯葉が溜まっています。
という何でもない写真なのですが、次の写真と比較するとその変化の状態がよくわかります。
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写真22.定点観察(2)
前回(3/26)に比較すると礫(軽石)が少し増えているのがわかります。
沢の奥右岸側にある太い枯れ木、中程にある木を指標にすると、30cm位の堆積があったことが推定できます。
この間の雨量は、6月14日から16日にかけて300から400ミリありました。
礫の動きは極めて緩慢で、土石流を起こすものではないと思います。
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写真23.堆積した礫の厚さ
ダムの堆砂地に堆積した礫の厚さは5〜10cm程度です。ここでは7cmあります。
白みがかっているので、下部の堆積物とははっきりと区別できます。
礫の履歴は新燃岳の噴火によって飛ばされてきたものが、斜面に堆積し、
今回の豪雨で沢に流されてここに堆積したものです。
堆積物の粒径は目視ですが、3〜1mmで、区分は礫〜粗砂でしょう。
場所は御池小学校より北西の標高570mあたりです。
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写真24.火山堆積物の変化
新燃岳では「土石流がおこる」と言われながら、
未だに土石流の発生はありません。
新燃岳周辺で起こる土石流発生のメカニズムは、噴火後に積もった火山灰には表面に細粒土があり、
これが「モルタル状となり、水のしみこみを妨げ土石流となる」と説明されていました。
しかし、新燃岳では雨が降ると細粒土は流されてしまいました。
土石流は泥(粘土粒子)と石礫が混じって流れますが、
ここではその粘土粒子が無くなっています。
現在は,粒径の大きな礫が露出していますが、礫は径が大きいので流されにくく山の斜面に留まったままです。
正確に言えば、大雨の度に少しづつ動いていることが観察できますが、
それは小規模で土石流となるような規模ではありません。
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