24年災害速報

1.紀伊半島災害(2012年3月撮影)


写真−1.紀伊半島災害

昨年9月、紀伊半島の和歌山、奈良県で発生した山地災害の見学に行ってきました。
和歌山から高野山を経て十津川を下り、新宮に出て田辺市に回りました。
写真は十津川の支流に面した赤谷の崩壊で、明治22年にも災害があったとのことです。
崩壊は写真中央上部の鞍部付近から生じ、手前に流れ下り、河原樋川に入り泥土となり対岸を約50m駈け上っています。
写真中央に見える赤い崩土は今回の崩れたもので、頁岩の風化したものです。
写真中央のピークは835mで、ここから左側に延びている尾根の下側に見える崖のような所が、明治22年に崩れた場所で、
明治22年の崩壊跡は2万5千分の1地形図にも描かれています。
場所の名称は赤谷としていますが、地盤工学会の報告書では長殿北地区と書かれています。


写真−2.赤谷(紀伊半島災害)

赤谷崩壊地のアップです。
写真の真ん中にあるピークは853mで、その左側に露頭らしい岩盤が見えていますが、
これは明治22年(1889)に崩壊した跡です。
露頭の下側に林が見えますが、これは明治22年に崩壊した崩土の上にはえた木です。
写真の中央下半分に大きく切れ込んだガリーは水の流れた跡なので、湧水があったことが推定できます。
ここは崩土なので次回の豪雨で崩壊する場所になると思います。
(場所:奈良県五條市大塔長殿地区)


写真−3.金山崩壊地

ここは有名な那智の滝の南側約3kmにあり、那智川の支流の源流部にあたります。
崩壊地の地質は上部から風化土層、ここには下位を構成する花崗斑岩の円礫が混入しています。
風化土層の下は柱状節理が発達した花崗斑岩があり、その下は熊野層群の泥岩です。


写真−4.花崗斑岩の柱状節理

花崗斑岩の柱状節理と、その上位にある風化層です。
風化層を構成しているものは、花崗斑岩の巨礫と粘土です。
この写真から言えることは、山の上の方は風化層が厚く、斜面は薄いと言うことです。
このことは斜面崩壊を考える上で、重要なことと思います。
花崗斑岩は石材としてつかわれ、この場所も下部は採石場です。
場所は熊野川の支流、高田川が熊野川に合流する地点の対岸です。


写真−5.花崗斑岩の崩壊地

熊野川(新宮川)に面した崩壊地です。
斜面の下半分、白い部分が節理の多い花崗斑岩で、その上にある茶色い部分は風化粘土層です。
粘土層の中には花崗斑岩の円礫が混入しています。
花崗斑岩をベースにしている所の崩壊地は、このような細長い形が多いです。
時々、「木がはえていると山くずれは起こらない」と言う話を聞きますが、
この例はその反対で、木がはえているのに崩れています。
撮影は和歌山県側から三重県を撮っています。


写真−6.典型的な崩壊地

森林に覆われた斜面に生じた崩壊地で、崩壊地は斜面の8分目あたりから発生しています。
斜面の8分目あたりは、山地斜面の「残積土」と「運積土」の境界になりやすく、崩壊が発生しやすい所です。
この崩壊地の形も細長く、地質は花崗斑岩です。



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