28年災害速報

1.熊本地震

熊本地震(2016/04/14,2016/04/16)

1−2.熊本地震・阿蘇市,南阿蘇村(2016年5月8日〜)


写真−30.列状崩壊

山腹に列状に刻まれた崩壊です。
崩壊の特徴は谷幅は大きくありませんが、斜面下方に長く連続していることです。
これは斜面を構成している堆積物の、耐浸食性が小さいということを示しています。
このあたりの崩壊地は、今回の地震によってできたものだけではなく、
前からあった崩壊地が崩れたと言う話も聞きました。
撮影日:2016/8/7


写真−29.岩石質崩壊

阿蘇の外輪山に発生した岩石質の崩壊です。
崩壊地の末端に多数の岩塊が見えていますが、
豪雨性の崩壊の場合には、泥状となり拡散するため、岩塊が堆積することはありません。
地震による崩壊の特徴だと思います。
撮影日:2016/8/7


写真−28.外輪山の山くずれ

外輪山に発生した山くずれの一つです。
崩壊地の上半分(草地になっている所)には凹凸がみえ、基盤岩の存在が伺えます。
下半分の植林地になっている部分は緩傾斜ですが、ここは落石が溜まった崖錐と思われます。
豪雨による崩壊の場合は、土砂が林内に拡散しますが、この崩壊地は落石が林内に吸収されているように見えます。
撮影日:2016/8/7


写真−27.農道を切る断層

熊本地震から約7ヶ月をすぎました。
この間熊本地震についてのニュースは減っていますが、被災の状態は残されたままです。
写真は農道を横切る断層で、手前のものは開口部は1m位ありますが、多くは数十cmです。
しかし開口部があると,車の通行はできず農作業はできません。
このような断層による農道の亀裂が沢山残されています。
撮影日:2016/8/7


写真−26.折れ曲がったビニールハウス

奥に見える白いものはビニールハウスです。
地震前は水平だったのですが、断層が真ん中に生じたため折れ曲がりました。
断層は手前にのびています。
写真の右半分が草になっていますが、この部分は約1m下がっています。
撮影日:2016/8/7


写真−25.滑落崖の上部にある亀裂

滑落崖の上にある亀裂です。
幅は1mあまりですが、すでに埋まりつつあり深さは不明です。
このような亀裂は地すべり地にもよく見られ、
一見するとこの亀裂からまた崩れそうな気がしますが、
これまでの経験で言えば、そのまま埋まってしまうものが多かったです。
撮影日:2016/8/7


写真−24.火山研究所の南西側崩壊地から

火山研究所南西側にできた崩壊地の頭部より、南西方向を見たところです。
正面にある高まりを境に,崩土は左右に分かれ、
右側に流れた崩土は,別荘地に流入し数軒の家を埋没させました。
撮影日:2016/8/7


写真−23.草地の表層部

火山研究所周辺には草地が拡がっていますがこの草地の断面です。
色調は黒色で,土質は火山灰起源のローム層、
層厚は約50cmあり、草の根がからみあってマット状になっています。
地震の後の地すべりにより、草地はマット状に分断され斜面に拡がっています。
この草地は写真や遠景では芝生の様に見えますが、芝生ではありません。
撮影日:2016/8/7


写真−22.崩壊地の中腹部

崩壊地中腹部には、一見すると人為的につくられたように見えるフラットな部分があります(写真中央部)。
ここは地震後にあった6,7月の豪雨によって崩土が流されたために出来たと思います。
地震動によって生じた崩壊地は、表層の植物がなくなりよくほぐされているため、雨によって容易に流されます。
最近(9月17,18日の台風16号)もかなり降ったようなので、崩土の流亡があったと思われます。
写真中央遠景に見える白いビルは、東海大学農学部です。
撮影日:2016/8/7


写真−21.軽石層のアップ

草千里軽石層のアップです。
軽石層は赤褐色で形状は角礫状です。
粒径は大きなもので約1cm、小さなものは1〜2mm程度で平均的には5mmくらいでしょう。
風化が進み柔らかいです。この層がすべり面になったと思われます。
中央の白い円は一円です。
撮影日:2016/8/7


写真−20.洋群状断裂草塊

この地域に見られる崩壊形態の特徴の一つに、地表面に分散する「洋群状草塊」があります。
草塊は元々は連続した草地であったものが、すべりにより分断されたものです。
草塊は雨の度に下位の土壌が流失し、消滅していっています。
撮影日:2016/8/7


写真−19.すべり面になったと思われる軽石層

深さ約10m地点に分布する赤褐色の草千里ヶ浜軽石層です。
色調は赤褐色で径1〜2cmの火山起源の礫で構成され、粘土分は少ないです。
層厚は20〜30cmです。
撮影日:2016/8/7


写真−18.崩壊地の頭部アップ

崩壊地の頭部は固結粘土層(ローム)です。
最上部は黒色の腐植層で、下位に約1.5mの褐色のローム層と黒色のローム層が見られます。
黒色ローム層には堆積時に出来たと考えられる平行な線状模様があります。
黒色ローム層の下位は褐色のローム層が続きます。
褐色ローム層の層厚は約6mで、草千里軽石層(ポールの下に見える赤色層)まで続きます。
全体的に、粘土層特有の乾裂(乾燥亀裂)が見られます。
撮影日:2016/8/7


写真−17.崩壊地の頭部全体像

火山研究所の南西部にある崩壊地頭部です。
正面にある崖は滑落崖といいたいところですが、
写真左側に見られる様に凹凸が見られることから、滑落崖ではありません。
表面はなだらかな草地です。
写真左上の白い建物が火山研究所です。
撮影日:2016/8/7


写真−16.崩壊地の頭部を望む

火山研究所の南西部に生じたすべりの全体像です。
写真左下から延びる路面のような筋は、固結粘土(ローム)で、
表土が6,7月の豪雨によって流されたために露出したものと思います。
手前に見える群状になった草は、草地が分断されたものです。
中央に見える白い建物は火山研究所です。
撮影日:2016/8/7


写真−15.火山研究所周辺の地すべり

地震によって発生した崩壊地に登ってみました。
場所は京都大学火山研究所の南西側斜面です。
ここは傾斜が5度程度の緩い斜面ですが、
発表された空撮映像で見ると、地すべりにしては滑落崖の形がいびつで、
土石流にしては流れの形が土石流らしくないので不思議に思っていました。
登ったのは中央に見える崩壊地です。
写真撮影:国際航業


写真−14.地震動による斜面崩壊

南阿蘇村は阿蘇カルデラ内に緩い斜面が拡がり、ここは雑木林や竹林となっています。
このような緩傾斜の斜面を利用して、別荘地やゴルフ場が点在していましたが、今回の地震で被害を受けました。
土質は火山性の粘土質なので、地震後の豪雨で流されています。
このような災害がなければ、すごくいい所なんですが。
撮影日:2016/7/3


写真−13.岩盤の崩壊面

地震動によって割れた岩盤です。
岩盤は新鮮な安山岩なので、豪雨が原因の崩壊では、このような新鮮な亀裂面ができることはありません。
岩盤の断面は鋭角でなにかに「割られた」形をしています。
表層の土壌層はきわめて薄く、このような薄い土壌層に植物が育っていることがわかります。
撮影日:2016/6/5


写真−12.地震動による斜面崩壊

地震動で崩れた斜面の特徴は、斜面に筋が残っていないことです。
雨で崩れると斜面を流れた水が集まりガリーが見られますが、地震動の場合はそれがありません。
崩壊した土砂は全て谷筋に残っているので、今後の雨によって流され、流木と混じるとダムアップが心配されます。
撮影場所:泥川と黒川の合流部付近
撮影日:2016/6/5


写真−11.斜面崩壊による谷埋め

泥川渓岸の斜面崩壊です。
渓床が埋められているので、大雨があると小規模な土石ダムが出来る可能性があります。
斜面の岩礫の分布を見ると,斜面下部が大きく、上部が小さく、崖錐が形成される時の特徴が見られます。
撮影場所:黒川と泥川の合流部。
撮影:6月5日


写真−10.面状表層崩壊

阿蘇での黒川沿いの崩壊の特徴は、面状表層崩壊と言うことが出来ます。
崩壊深さは1m以内ですが、広い面積にわたって崩壊し、数千m2に及んでいる場所も見られます。
したがって崩壊地の形はフラットで、地すべり地に見られる様な、深さ方向に掘られたような形は見られません。
撮影場所:阿蘇大橋から黒川左岸側
撮影:6月5日


写真−9.黒川の右岸崩壊地

黒川の右岸崩壊によって露出した阿蘇カルデラの地下構造です。
表層5〜10mには大礫混じりの土層が分布し、その下位は破砕した安山岩が見られます。
写真の左下にはよくそろった柱状節理があります。
地表面は人が耕したフラットな田畑ですが、地下にはこのような阿蘇のドラマが隠れていることを知りました。
撮影は阿蘇大橋から少し下流側です。
撮影:6月5日


写真−8.黒川右岸の崩壊と長陽大橋

黒川右岸の崩壊です。
崩壊地は表層から約4,50mは岩塊混じりの土層ですが、その下位は安山岩の柱状節理が見えます。
この斜面には長陽大橋が出来る前に使われていた道路があったのですが、崩壊のために全て無くなっています。
「これが自然なのか」としばし絶句。
撮影:6月5日


写真−7.断層は瞬間

昔、根尾谷の断層記念館で断層の断面を見たときに、
これが数秒で出来るのか、ジワジワと数分をかけてできるのか疑問に思っていました。
今回、断層の沈下部分に居た人から話を聞き、これが瞬間に出来るものであることを知りました。
撮影:6月5日


写真−6.断層ができる瞬間

内牧の断層を見学しました。内牧の断層は幅約50m程で、約1mの段差を生じています。
段差は断層によってできたものですが、
断層ができるときは、ゆっくりとずれるものか、瞬間的にドンと落ちるものなのか疑問に思っていました。
ところが、ここで住人の一人に会って話を聞いた所、
その方は寝ているときに、そのまま1m「落下」したそうです。体が痛かったとのことでした。
写真は排水溝がせん断された所です。
土層は表層に黒色の腐植土があり、この下位に黒褐色の粘土層がみられます。ここでは深さは1.4mでした。
撮影:6月5日


写真−5.57号線上に発生した大規模な表層崩壊

57号線上で発生した大規模な表層崩壊です。
下部に崩壊を横切る線が見えますが、このラインは水路がある場所なので、水路の排土工事が始ったものと思います。
57号線の路上には沢山のプレハブができているのが見え、なにか工事が始まっているようです。
撮影:6月5日


写真−4.道路を切った断層

小さい町の路地を引き裂いた断層。
何年か前にブロック塀をつくるときには、 まさかここに断層ができ、こんな段差を造るとは誰も考えなかったでしょう。
地震は恐ろしい。


写真−3.地溝となった畑

これまで見てきた土地のズレは、右ズレで、高低差はあまりなかったのですが、
ここは真ん中が沈下して溝状になっています。
原因は土地が両側に引っ張られるか,真ん中が沈下したためでしょう。
溝状のことを地質学ではグラーベンと言います。


写真−2.崩壊地の下部に見られる凝灰岩の節理

崩壊地の下部には凝灰岩の節理が見られます。
この節理は全体的には縦方向ですが、斜め方向などもみられ、
日向地域に見られる垂直な節理に較べると、ランダムの傾向が強いので,
その分間隙が多く水分を含む量も大きいと思います。
節理の上には、水平方向に堆積した火山性の粘土層が見られます。


写真−1.阿蘇大橋北側の崩壊(国道57号線)

熊本地震の一つの象徴として、よく使われている大崩壊地です。
崩壊地は全体的にノッペリしていることから、粘土質の崩土が水によって流されたことが考えられます。
手前の道路の延長に阿蘇大橋があり、これが落橋してしまいました。



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