2016熊本地震

     2016熊本地震その後シリーズ


その後の推移


1.濁川

写真1.地震動による斜面崩壊

地震動で崩れた斜面の特徴は、斜面に筋が残っていないことです。
雨で崩れると斜面を流れた水が集まりガリーが見られますが、地震動の場合はそれがありません。
崩壊した土砂は全て谷筋に残っているので、今後の雨によって流され、流木と混じるとダムアップが心配されます。
撮影場所:濁川と黒川の合流部付近
撮影日:2016/6/5
  
写真2.地震動で崩壊した斜面のその後

濁川と黒川の合流部近くの斜面ですが、
6月5日の写真では斜面には倒木がころがり、沢は土砂で埋まっていました。
しかし土砂も倒木も、6月,7月の雨で流されてしましました。
豪雨による崩壊の場合は、崩壊時に土砂、倒木が同時に流されますが、
地震動による崩壊の場合は、崩壊と流出には時間差があるということを示しています。
撮影:2016/8/7


写真3.斜面崩壊による谷埋め

濁川渓岸の斜面崩壊です。
渓床が埋められているので、大雨があると小規模な土石ダムが出来る可能性があります。
斜面の岩礫の分布を見ると,斜面下部が大きく、上部が小さく、崖錐が形成される時の特徴が見られます。
撮影場所:黒川と濁川の合流部
(撮影:2016/6/5)
  
写真4.表土が洗い流された斜面

写真は濁川と黒川の合流部近くの斜面です。
地震動による崩壊のため、発生後は土砂に覆われ倒木が散乱していましたが、
6月、7月の豪雨で、全て流され表層土壌層と基盤の岩石が露出しました。
岩石は安山岩で、柱状節理と板状節理が見られます。
写真左下が河床で水が溜まっています。
(撮影:2016/8/7)

写真5.黒川右岸の崩壊と長陽大橋

黒川右岸の崩壊です。崩壊地は表層から約4,50mは岩塊混じりの土層ですが、
その下位は安山岩の柱状節理が見えます。
この斜面には長陽大橋が出来る前に使われていた道路があったのですが、崩壊のために全て無くなっています。
「これが自然なのか」としばし絶句。
(撮影:2016/6/5)
  
写真6.黒川右岸と長陽大橋周辺の3ヶ月後

6月に撮った写真では、斜面に崩土と倒木が載っていて、堆積物の状況が解りませんでしたが、
7月の豪雨で表層物が流出し断面の状態が解るようになっています。
表層には10〜20m程度の火山性粘土層があり、その下位は岩層で、岩層には柱状節理が見えます。
黒川の水位も下がり河床の礫層も現れています。
(撮影:2016/8/7)

2.2019/08/20

写真3.火山研究所の南西側崩壊地から

火山研究所南西側にできた崩壊地の頭部より、南西方向を見たところです。
正面にある高まりを境に,崩土は左右に分かれ、
右側に流れた崩土は,別荘地に流入し数軒の家を埋没させました。
  
写真4.阿蘇火山研究所南側の崩壊地

火山研究所の南側にあった草地が、地震後、塊状になりました。
現地は固結粘土層(ローム)であったため、
塊状の亀裂に水が浸透すると容易に流動化するのではないかと思っていましたが、
今回行ってみると粘土層は排土されていました。
厚さは約10m位であったので、相当な土量と思います。
排土部は、写真の真ん中で少し低くなった部分です。
地震直後の状態は、「熊本地震災害2016/8/17」にアップしています。
撮影日:2019/8/19

写真1.崩壊地の頭部アップ

崩壊地の頭部は固結粘土層(ローム)です。
最上部は黒色の腐植層で、下位に約1.5mの褐色のローム層と黒色のローム層が見られます。
黒色ローム層には堆積時に出来たと考えられる平行な線状模様があります。
黒色ローム層の下位は褐色のローム層が続きます。
褐色ローム層の層厚は約6mで、赤色礫層(ポールの下に見える赤色層)まで続きます。
全体的に、粘土層特有の乾裂(乾燥亀裂)が見られます。
  
写真2.草千里ヶ浜軽石層

草地に生じた崖の最上部に見られるローム層の断面です。
人が立っている所に、オレンジ色の明るい層が見られますが、これが草千里ヶ浜軽石層です。
崖全体の写真は、2016/08/26にアップしています。
撮影日:2019/8/20
参考文献:宮縁育夫(2003)阿蘇火山における過去9万年間の降下軽石堆積物、火山、vol44,No2,p195-214


写真5.


  
写真6.烏帽子岳(阿蘇)の斜面崩壊

熊本市で地すべり学会があり、友人が来るというので行ってきました。
この時、阿蘇に行こうと言うことになり、ついて行きました。
阿蘇には20年ほど前に行ったことがありましたが、
この時は火山には全く興味が無く、火山博物館の方が面白かったとことを憶えています。
しかし今は、新燃岳、硫黄山の噴火を経験して、火山には大いに興味があり、
また熊本地震の時には、多数の斜面崩壊が発生したことを知り、一度行きたいと思っていました。
写真は火山博物館の前に見える烏帽子岳の崩壊地です。
雨による崩壊との違いは、尾根のギリギリから崩壊が発生していることです。
撮影:2019/8/20




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