宮崎県北鉱物採取の旅

−−−十月の地質巡検報告−−−

ガ イ ド:足立先生
参 加 者:高谷精二,後藤繁俊,澤山重樹,川野暁大,桝田
日 時  :10月14日(土)
見学コース:宮崎−門川−上井野−北方−鹿川−大崩山−高千穂
      −小芹川−土呂久−水晶谷−尾平−竹田−三重−延岡−門川

10月14日
 門川を出発し388号線を北上、上井野で阿蘇4とその下位の粘土層を見学する。(写真-1)
 黒色で凹凸の激しい凝灰岩と下位の明赤褐色粘土層は著しい対象を見せている。
なお詳細に見ると、凝灰岩の最下部には薄い酸化鉄の層が連続しているのが観察できた。 おそらくこれは水の流れがあったことを示すものであろう。
 また、この粘土層の表面を剥ぐと酸化鉄のリングが現れた。 直径は約50cmで、中央には数cmの酸化鉄の塊があった。
リングの形成にはこのような核が必要なのだろうと思う。

 88号線から218号線に入り、神門層とその上にのる阿蘇4を見学する(写真-2)。
 ここでの神門層は、層厚数cmの薄い層で構成された砂岩,頁岩である。
頁岩は硬く割れると数cmの角礫となる。露頭の表面には所々に白色の結晶付着が見られた。
見た感じではフワフワ感があり、宮崎層群に見られる結晶とは異なるので、 ツバをつけてみると溶けたので水溶性であることがわかった。
さらになめてみるとニガ味があるが、シオカラさが少なかった。 おそらくNa分が少ないものと思う。時代により析出する塩類が違うのだろうかと思う。

 まきみね橋から網瀬川を見下ろし、その彼方に連なる端助,矢筈岳,比叡山, 槙峰の鉱山跡を遠望(写真-3)した後、網瀬川沿いにさかのぼる。
 比叡山では展望台に登り目の前にそびえる矢筈岳の勇壮な岩脈と、 それを飾るように生えた松を望んだ。
ここを訪れるのは前回の見学会とで2回目であるが 圧倒される景観である。
望むらくは観光開発の魔手にかからないように願う。
山梨県に昇仙峡というやはり花崗岩の渓谷があるが、それに勝るスケールである。
矢筈岳を見ながら昼食とした。

午後はさらに奥に進み鹿川の花崗岩を見学。 滑らかに続く一枚岩に圧倒されながらシャッターを切る。 岩盤に浮き出たゼノリスの写真も撮った。

この後、今村から林道に入る。
 この林道は未舗装なので凹凸が激しく乗り心地は良くないが、 のり面は保護工なしのマサ土なのでマサ土の観察にはうってつけの所である。
宮崎にはマサ土はないと思い込んでいたが、ここは良い見学地だ。 次回は学生を連れて見学しようと思う。
 網瀬川の支流から200mほど引き返した所で車を降り放置された林道を歩き始めた。
あちこちで崩壊が発生し放置された林道は浸食されるにまかされて1mを越えるガリが生じていた。
また、山側からの排水用につくられた鉄製の簀の子が浮き上がり、水の浸食力の強さを思い知らされる。 「放置された年がわかれば浸食量もわかるのに」と思う。
 林道から2m程斜面を下った所に電気石の露頭があった。ちょっと見には黒い石であったが、 よく見ると1ミリ位の針状結晶が束になっていた(写真-4)。
 電気石は面河渓(愛媛県)で見たことがあったが、 それは岩盤に張り付いたもので採取出来るようなものではなかった。 ここでは簡単に採取することができた。
足立先生の説明によれば、 電気石は資源としてはあまり価値がないとのことであった。
さらに林道を登り旧日本石英の採掘場跡についた。
「ここをダンプが走っていた」との説明であるが、 崩れかけた石垣や山地にしては不釣り合いなフラット面から、やっと人の営みがあったことがわかる。
20cm〜30cm程度の白い岩塊が折り重なったところで岩石はペグマタイト、 この中に水晶の結晶があった。足立先生は「これくらいのがあった」と言って10cm位の大きさを示す。
そのたびに振るうハンマーに力を込めるが、出てくるものは太さが1cm, 長さが2〜3cmのものが精一杯であった。
しかし、小さな晶洞に数ミリの水晶が密集するのを見つけたときの喜びは、 何ともいえない満足感を与えてくれた。(写真-5)
 他人から見れば何でもない石ころであるが、おそらくこれがコレクターの得る満足感だと思う。
岩塊をひっくり返しハンマーを振るうこと1時間、とても持ちきれない程のサンプルを集めた。
その中から一つ捨て二つ捨て、下り道ではあるが1時間歩かなければならない、 体力と相談しながら一歩一歩下る。

夕闇の迫った網瀬川を後にして今夜の宿、高千穂町の民宿「かりぼし」に向かう。
夕食の後、足立先生を囲み楽しかった今日の見学と採取、 地質学一般について遠慮のない質問を繰り出した。
Q:地質図にないものが沢山ありますね。?
A:沢山あります。・・・尾鈴の南側にある岩脈状の花崗岩は極めて珍しいものである。
・・・矢筈岳,比叡山のリングダイクは日本で最大である。
・・・鹿川北西の花崗岩の上には四万十がのっている。
・・・などを聞きながら11時過ぎに眠りについた。
10月15日
 6時半に目を覚ます。外を見ると少し雲があるものの良い天気だった。
最初は高千穂峡に降りて阿蘇4と3の境界を見る。これは前回も見た所であったが、 サンプルを採取する(写真-6)。
 まもなく川野さん一行が合流し、高千穂渓谷の切り立った岸壁にある蜂の巣を見つけ、 しばらくその話題に花を咲かす。
河床はホルンフェルス化した秩父帯とのことであった。

 今日の最初の採取ポイントは小芹川のフズリナ化石であった。小さな何でもない谷川であったが、 礫をよく見るとあるわあるわ。
土呂久川をさかのぼり、土呂久鉱山跡につく。
川の向こうに鉄格子の入った坑口が見え、とうとうと水が流れ出していた。
谷深く紅葉寸前の谷で、車で走れば何でもない山村であるが、ここに砒素中毒があった事を聞く。
 それを発見するきっかけとなったのが、 この地区の生徒の体格が悪いことに気づいた小学校の先生の報告から始まったとの説明は、 科学の無力さとその発見が科学であることの矛盾を感じないわけにはいかなかった。
 社宅があった所は石垣もしっかりと残っており、 多分ここで子供時代を過ごした人も日本のどこかにいるのだろうと思う。

 土呂久の谷を通過し水晶谷で水晶を探す。
ここは林道を造る時に大量の水晶が出たところだそうだ。
沢山出たので、小さいものは土砂と一緒に谷に捨てられたため、この土砂を掘ると水晶が出てくる。
道路の山側には堀跡が残っているので、行ってみると1cm程度の水晶が次々と出てきた。
 谷に降りた方も上がってきて採取物を道路に広げ即席の品評会をした結果、 直径約2cm長さ約6cmのものを採取した増田さんが1等になった。

 水晶谷から少し登った土呂久の谷を一望できる地点で釜石を探した。
結晶が小さく水晶ほどの魅力は感じなかったが、それでも皆さん一生懸命であった。
 常光寺の滝で昼食となったが、滝の周辺はモミジが多く紅葉するときれいだろうと思う。
しかし、こんな遠い所まで人が来るだろうかと思っていたが、 昼食を食べている間に二組のカップルが来た。来る人もいるんだなと思う。
 常光寺の滝から少し行くと中野内で、ここが宮崎交通(路線バス)の終点と言う。 まもなくして尾平トンネル入り口に来た。ここをくぐると大分県である。

ここで尾平トンネルにまつわる足立先生の話

第一話:昔、冬にこのトンネルに入ると氷の壁ができていて通れなかったとのこと。
(感想:そんな事もあったんですね?そんな光景見てみたい)
第二話:昔ある時、トンネルの中に車を止めて寝ていると、 ヒゲををはやした男が一人何も言わずに通り過ぎていったとの事。
文字にするとこれだけで味も素っ気もないのですが、その情景を思い浮かべて下さい。 (感想:何となく不気味)

 トンネルを抜けるとそこは大分県で下りになっている。
 振り返ると県境の山々が峨々とそびえている。異様な形をした峰の名前を聞くと「天狗岳」とのこと、 突き出た鼻がありホントにそのとうりであった。
あの峰々は、まき道が無くあの凹凸の尾根どうりに上り下りしなければいけないとのこと。
 澤山さんは高校時代に山岳部で登ったときのことを盛んに懐かしがっていた。
 しばらく下った所で車を止めると、足立先生は「この下に方鉛鉱,珪灰鉄鋼, ヘデンバージライト,硫化カドミュウム鉱がある」と、 まるで宣伝するように言うとガードレールを越えサッサと急な斜面を降り始めた。
 私としては今日は十分満足していたので、 このまま大分県側の景色を楽しみながら帰りたいと思っていたので、 「まだあるの?」と思いながらガードレールを越えた、というのが正直な思いであった。
 斜面は20〜30cmの角礫ゴロゴロなので、一行は直線に並ばないように降りていった。
現場は3m程度の露頭で、新しいハンマーとノミ跡があった。ここで、方鉛鉱,珪灰鉄鋼, ヘデンバージライトを採取する。
真四角で鉛色に光る方鉛鉱を見ながら、これがどのようにしてできたのか思い巡らした。
 さらに下ると尾平鉱山跡についた。
 坑口は2m位あるのだろうか、 鉄格子がしてあり中に入ることはできないが坑内からはかなりの量の地下水が出ていた。
地下水は一度坑口のプールにため、そこから幅約30cmのU字管で排水していたが 水の深さが約20cm位あり、最終的には谷川へ流していた。
坑口にあるプールの壁面には、 うす茶色の藻のようなものが付きユラユラと揺れていた。多分鉄の水酸化物だろう。 試しに採水してきた水のpH,電導度,陽イオンの分析を行った。
 結果は次のとおりであった。

尾平鉱山の水質(2000年10月15日採水)

pH

EC(μs/cm)

Na(mg/l)

Mg(mg/l)

K(mg/l)

Ca(mg/l)

3.1

1300

10.6

15.2

2.82

19.7


 尾平からはひたすら下り、三重町から国道326号線を通り延岡⇒門川へ、足立先生宅で小休止。
玄関前にはアルワ、アルワ、一抱えもある(少々オーバー)水晶の結晶がゴロゴロ。 きょう採取して来た獲物がかわいそうなくらい貧相に見えてしまった。
これがキャリアの差なのだと納得させられる。
あとはひたすら宮崎へ走り続け、試験センターへ帰り着いたのは8時20分でした。
(文責:高谷精二)


写真−1.



写真−2.



写真−3.



写真−4.



写真−5.



写真−5.



写真−6.



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